登記は、売買や贈与、抵当権の元の債権の消滅などの事実の変動があっても、登記手続をせねばそのままになってしまいます。ですので、既に弁済や時効により元の債権が消えている抵当権であっても、抹消登記の手続をするまでは、登記が残ることになります。
元の債権が消滅しているのに登記がそのままになっている抵当権などを、休眠担保権と呼んでいます。
抵当権の抹消登記手続を行うためには、原則として、抵当権者の協力か、裁判手続が必要になります。
休眠担保権では、長い年月の経過によって、担保権者が死亡している場合が多くあります。その場合、担保権者の相続人全員の協力を得るか、担保権者全員を相手方として裁判手続を行うことになります。担保権者の相続人も死亡し、さらにはその相続人も死亡するなどして、相手方とせねばならない相続人が数十人になることもあります。相手方となる相続人の人数が多い場合、全員の協力を得ることは困難であり、裁判手続を選ぶことが多くなるでしょう。
年月が経過すればするほど、相手方とせねばならない相続人が増えていく可能性があります。相続人が増えれば抹消のための手続的・経済的負担も増えていくことになりますので、休眠担保権については、放置せず、早めに抹消のための行動を通ることが望ましいです。